ストロボ撮影時のEV値の計算方法についてまとめました。まずEV値について簡単におさらいしてみたいと思います。
EV値とは
撮影時の露出を表す指標で、Exposure Valueの略称です。EV値は、ISO感度、絞り値、シャッタースピードの設定によって決定されます。
EV値は、光の量を表す数値であり、明るさと暗さの比率を対数関数で表したものです。一般的に、明るさが1段階増えるごとにEV値は1つ上がり、暗さが1段階増えるごとにEV値は1つ下がります。
EV値の計算式
EV値 + ISO値 = Av値 + Tv値 + ND値*
*ND値は補助的要素。ISO値はEV値計算用にEV値に換算した値とします。
EV値計算の基本要素
EV値を計算するときの基本要素はAv値、Tv値、ISO値の3つです。
絞り値(F値) | F1.0 | F1.4 | F2.0 | F2.8 | F4.0 | F5.6 | F8.0 | F11 | F16 | F22 |
Av値 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
シャッター スピード | 1/ 1 | 1/ 2 | 1/ 4 | 1/ 8 | 1/ 15 | 1/ 30 | 1/ 60 | 1/ 125 | 1/ 250 | 1/ 500 | 1/ 1000 | 1/ 2000 |
Tv値 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
ISO感度 | 100 | 200 | 400 | 800 | 1600 | 3200 | 6400 | 12800 |
ISO値 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
EV値計算のための補助的要素
EV値を計算するときの補助的要素として、NDフィルターを使用するときのND値があります。
NDフィルター | ND2 | ND4 | ND8 | ND16 | ND32 | ND64 | ND128 | ND256 | ND500 | ND1000 |
ND値 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
EV値の計算例1
計算式は次のように置き換えできます。
EV値 = Av値 + Tv値 + ND値 – ISO値
よって、例えば、
F5.6[5]、1/125[7]、ISO200[1]のとき、
EV値 = Av値[5] + Tv値[7] + ND値 – ISO値[1] = 11
F2.8[3]、1/2[1]、ISO800[3]のとき
EV値 = Av値[3] + Tv値[1] + ND値 – ISO値[3] = 1
F8[6]、1/125[7]、ISO100[0]、ND4[2]のとき、
EV値 = Av値[6] + Tv値[7] + ND値[2] – ISO値[0] = 15
以上のような計算により、EV値が算出できます。
EV値の計算例2:EV値を変えずに設定を変更するには
のときのEV値は、8+10-0 =18
このEV18を変えずに、シャッタースピードを1/125まで下げたいときの一つの例として、NDフィルターを使った例をご紹介します。
計算式は、8+7-0+3 =18 となり、EV値を変えずに設定を変更することができます。
ストロボを使用する場合のEV値計算について
※計算方法はあくまでYumox流となります。
では、ストロボを使用する場合のEV値の計算方法について考えてみたいと思います。
EV値の計算式は次のようになります。計算するには、露出計で測ったり、カメラの液晶モニターで確認しながら合わせていくなど、いくつか方法があります。
ストロボは閃光時間が短く、Tv値*が変わっても、ストロボによるEV値にほとんど影響がありませんので、Tv値を除外して計算します。
*定常光の適正露出時のシャッタースピード〜ストロボ同調速度の範囲内。
※光量を変更した場合の変化量を「光量変更値」としました。
EV値(by flash) + 光量変更値 + ISO値 =Av値 + ND値
定常光をブラックボックス化(-4EV化)して、絞り値F5.6、シャッタースピード1/125、ISO400の条件で、ストロボのEV値計算を行ってみたいと思います。
EV値(by ストロボ光)[3EV]+光量変更値[0EV] + ISO値[2EV] = Av値[5EV] +ND値
ストロボ光を+1EV明るくした場合は下記のような式になります。露出オーバーの状態です。
EV値(by ストロボ光)[3EV]+光量変更値[1EV]+ ISO値[2EV] = Av値[5EV] +ND値
ストロボ光を+1EV明るくした被写体に対し、絞り値+1EVの調節で適正露出を出す場合は次のようになります。
EV値(by ストロボ光)[3EV]+光量変更値[1EV]+ ISO値[2EV] = Av値[5EV+1EV] +ND値
変更後は次のようにEV値に統合します。
EV値(by flash)[4EV] +光量変更値[0EV]+ ISO値[2EV] = Av値[6EV] +ND値
※シャッタースピードの可変範囲は、定常光(ブラックボックス化(-4EV化)する前の値)の適正露出時のシャッタースピード〜ストロボ同調速度の範囲となりますので、1/8〜ストロボ同調速度(約1/160〜1/320、機種によって異なる)となります。
用語解説
Av値
Avは、Aperture Valueの略称。Av値を設定することにより、被写界深度(被写体がピントが合う範囲)をコントロールすることができます。F値が小さい(開放絞りである)ほど、被写界深度が浅くなり、被写体と背景の間にボケを生じさせることができます。一方、F値が大きい(絞り込んだ)場合は、被写界深度が深くなり、被写体全体がシャープに写ります。
Tv値
Tvは、Time Valueの略称。Tv値を設定することにより、被写体の動きに応じたシャッタースピードをコントロールすることができます。シャッタースピードが速いほど、被写体の動きを止めることができ、シャッタースピードが遅いほど、被写体の動きを表現することができます。
ISO感度
ISO感度は、撮影環境の明るさに対してカメラセンサーがどれだけ感度が高く反応するかを示す数値で、ISO感度が高いほど、より暗い環境でも撮影できます。ただし、ISO感度が高くなるほど、画像ノイズ(粒子状の乱れ)が生じやすくなります。